9月30日(土)
チェット・ベーカーの伝記、『終わりなき闇-チェット・ベーカーのすべて』を読み終わる。かなり前に買った本だが、2段組の細かい字で500ページもある大作なので、読むのに時間がかかった。著者は、あまり経歴がよくわからない、ジェイムズ・ギャビンというライターで、翻訳者の鈴木玲子氏は、訳者あとがきで、足かけ3年、チェット・ベーカーの亡霊にとりつかれていたと告白している。この翻訳者のことばに引かれて読み始めたところがあるが、たしかにこの天才的なトランペッターの生涯は、あまりに凄惨で、波乱に満ちている。なにもかも、ベーカーが30年にわたってたしなんだ麻薬のせいだ。
ジャズマンのなかで、ことさらチェット・ベーカーが好きだったわけではないし、これまでちゃんと彼の演奏は聴いたことがない。1956年のジャズのことを調べていた時期に、その年に出ていくつかの演奏を聴いたことがあるが、完全に麻薬漬けになったそれ以降の時代の演奏は、今でもあまり聴いていない。本を読みつつ、聴いてみたいという思いはつのってきたものの、麻薬漬けの日々を思うと、普通に聴けるものなのか、ちょっと自信がなくなる。
ジャズと麻薬はつきもので、多くのジャズマンが麻薬をやり、それによって命を縮めたりしているわけだが、これほど多くの、また多種類の麻薬をやった人間はいたのだろうか。しかも、その間の彼の演奏は、ときに聴衆を魔法のようにとりこにし、周囲に集まってくる女性たちに対しても、一緒に麻薬漬けになりたいと思わせる魅力を発していたようだ。破天荒といえば、これほど破天荒な生涯もない。いったいどうやったら、そんな生涯が送れるのか、想像することも不可能だ。
それにしても、よくこの本が翻訳され、出版されたものだと思う。とても商売になるような本ではない気がするが、どうなのだろうか。
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