10月12日(木)さすがの吉右衛門
国立劇場に『元禄忠臣蔵』通しの第1部を見に行く。大石内蔵助は吉右衛門。3ヶ月にわたって、全編を上演するというので、3部まで見に行く予定にして、チケットもとってある。ただ、第2部が藤十郎というのは、当初の予定と違うのではないだろうか。これはまったくその推測だが、團十郎の健康が万全だったら、吉右衛門、團十郎、幸四郎で内蔵助をやったのではないだろうか。その方が、落ち着きがいいし、連続性があるはずだ。
『元禄忠臣蔵』は、半分くらい見たことがある。『仮名手本』とは違い、忠臣蔵そのものが物語りになっていて、男性中心、女形が活躍する場面がほとんどないのが特徴だろう。第1部も、女形としては内蔵助の妻、おりくに芝雀が出ているだけだ。吉右衛門は、時代物だとせりふの通りが悪いが、こうした新歌舞伎ではろうろうとしてせりふを聞かせる。さすがと感心する。とくに、大詰めの「最後の評定」の終わり、花道を引き上げていくところがよかった。
ただ、これは最近感じることだが、真山青果の考える人間の生き方が、今の時代とあまりに隔たっている気がして、うまく感情移入ができない。人間の意地というか、プライドというか、そのぶつかりあいが真骨頂だが、それが、理解しにくい。吉右衛門が、脚本に忠実に、青果の世界を演じれば演じるほど、遠くなってくるような気もする。見ながら、仮名手本でも、元禄でもない、まったく新しい忠臣蔵を書いたらどうなるかを考えてみたが、途方もなく難しいことのように思えてきた。
今日は「満員御礼」の札が出ていたが、国立劇場にこれだけの人がつめかけているのを見るのは久しぶりだ。團十郎が『義経千本桜』を通しでやったとき以来ではないか。やはりお客が入っている劇場はいい。そんなことを思いながら、国立劇場を後にした。
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