2月9日(金)銀座で話題の周防映画を見る
午前中、宝島の原稿を仕上げる。もう一度目を通して完成するはず。
午後は、銀座へ出かける。少し買い物をして、山手線の線路下にあるドイツ料理の店、「JS・レネップ」というところで、軽く食事をし、ビールを飲む。なかなか本格的なドイツ料理の店だった。まだ時間が早いせいか、一人で来て、ビールと食事をしている男性の姿をよく見かけた。
それから、映画館で、周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」を見る。場内はかなり混雑していたが、銀座のせいか、しっかり働いている感じの人が多かった。周防監督の映画は、メジャーなものは皆、見ているが、今度の作品はこれまでとかなり違った。以前の周防映画は、どれもイニシエーションものの典型のような作品で、主人公が試練にぶつかって成長する姿が実にはっきりと描かれていた。けれども、今回はその面はまるでなかった。
日本の裁判制度の問題点を描き出したということなのかもしれないし、ディテールは相当によくできている。物語の展開もうまく作られているが、かえってそうであるがゆえに、これはいったいどういう意図をもって作られたものなのかがわからなくなった。制度の問題をそのまま描き出すなら、書物でもできるし、あるいはドキュメンタリー映画でもできる。従来の法廷もののような、ドラマチックな展開があり、最後は正義が勝つような方向にむかわないので、どう受け止めていいかが難しい。
たとえば、主人公が大事な面接なのに履歴書を忘れ、それをたしかめるために一度電車を降りるというところが、逮捕される伏線になっている。でも、そんなに大事なとき、履歴書を忘れたりするのだろうか。そこに、どういった心理が働いていたのか、それが示されていないだけに、すべての証拠が映画上で「開示」されていないような印象を受けた。被告人質問でボロを出すところも、えん罪裁判ということなら、もっと弁護人が事前にシミュレーションをしていていい気がする。再現実験よりも、実はそちらの方が大事だったのではないか。ボロが出た後、弁護士を含めて話し合うシーンがあるが、そこで十分に用意しなかったことを後悔する発言が出なかったことも、不自然な気がする。
終わってみると、すべては検察官や裁判官の心証だけで決まるのだという印象を与える。たしかにそこに大きな問題はあるし、痴漢裁判、痴漢えん罪裁判の難しさがあるのだろうが、ただそれだけでもないはずだ。少し消化不良の感じがした。
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