4月14日(土)保坂尚希は出家したのか?
俳優の保坂尚希の出家が話題になっている。何か取材する側に、出家という行為に対するおそれのようなものがあるようにも感じられる。本人は、自身のホームページのなかで、得度し、出家するに至った理由を語っている。
その理由は、芸能リポーターに任せるにしても、出家という言葉遣いに難しさを感じる。保坂は、出家、得度し、僧侶になったということになっているようだが、それぞれのことばの意味するところについて、かなり曖昧な部分があるように思える。
出家ということが存在する宗教は、実は限られている。キリスト教のカトリック、ギリシア正教、そして仏教には出家があるものの、ほかの宗教には存在しない。ユダヤ教にもイスラム教にもないし、儒教にも神道にもない。カトリックの場合、出家するということは、生涯にわたって独身を貫くという誓いを立てることで、神父や修道僧になるために行われる。仏教の場合にも、基本的にはこれと同じで、出家とは独身を貫き、家族を生涯にわたってもたないことを意味する。
ところが、ここでやっかいなのが、日本の仏教である。日本の仏教でも、当初は、仏教全体に共通する出家の制度が確立されていたが、しだいにそれが崩れ、出家したはずの僧侶が家庭をもつという事態が生まれた。明治以降は、それが制度として定着する。それは、仏教の原則からは逸脱することだけれど、背景には、「娑婆即浄土」の考え方をとる天台本覚思想の影響があるものと思われる。世俗の世界がそのまま浄土に通じるというこの思想が、僧侶にも適応され、本来は出家して家族を持たない僧侶が、世俗の世界を知るために妻帯し、家庭生活を営むという形態が生まれた。そこに、日本における出家概念の混乱が生まれる素地があった。
日本に近いのが、ギリシア正教の場合で、ギリシア正教では、儀式を司る司祭のなかに、カトリックのように終生独身を誓う者と、司祭には成るが結婚して、家庭生活を営む二つの種類が存在している。日本の仏教僧侶は、これで行けば、後者に当たるわけだ。もちろん、日本でも生涯にわたって独身を貫く僧侶もいて、それは「清僧」と呼ばれたりする。
そうしたわけで、日本では、得度し、出家し、僧侶になっても、保坂のようにそれまでと基本的に変わらない生活を続ける人間が出てくることになるわけだ。それは、仏教の「世界標準」からは逸脱しているものの、日本では許容されている。その点をふまえないと、とんちんかんなことになってしまう。芸能レポーターも宗教学を学ぶ必要がありそうだ。
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