8月15日(水)なぜ和辻の『古寺巡礼』はおもしろいのか
終戦記念日。首相が靖国神社に参拝しないので、前よりはるかに話題にならなくなってきた。閣僚も1人しか参拝していない。このままだと、靖国神社問題はなし崩し的に、社会的な話題にはならなくなっていくのだろうか。新追悼施設のことも、すっかり聞かなくなった。ある意味、解決のしようのない問題なので、これでいいのかもしれない。
朝刊に五木寛之氏の『百寺巡礼』のDVDの広告が出ていた。以前テレビで放送されていたもので、一度、身延山のだけ見たことがある。基本的に、入門編ガイドといったところか。本も出ているようだが、どうなのだろう。それに比べたとき、和辻の『古寺巡礼』は今でもかなりおもしろい。
法隆寺の金堂壁画などは、焼ける前に著者が見ているので、貴重ということもあるが、やはり著者が巡礼を試みたときの状況が意味をもっていたように思う。本文中にも、親と対話したことが出てくるが、このときの和辻は、将来どういう道を歩むのか、迷っていた。その迷いと巡礼という行為には強い結びつきがあったのだと思う。彼は、奈良の古寺の仏像などに、遠くギリシアの影響を見ていくが、このギリシアというのは西欧文明の象徴であるようにも見える。そうした西欧文明と日本との関係はどういうものなのか、彼は本当はそれを探ろうとしていたのではないだろうか。同じ時期に書かれた文章を集めた『日本精神史研究』を読むと、和辻の本当の意図がわかってくる気がする。今風に言えば、『古寺巡礼』は自分探しの書ということになってくる。
その『日本精神史研究』のなかに、『枕草子』のテキストの問題が出ている。『枕草子』には順番におかしなところがあり、元は今と違うものだった可能性があるという。その文章が書かれたのは、大正から昭和のはじめにかけてで、今のテキストがどうなっているかわからないが、これはかなりおもしろい問題であるような気がする。要注目だ。
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