10月28日(日)私たちが何を失ったのかという点が二つの展覧会から明らかになってきた
昼から出かける。飯田橋へ。トッパンが作った印刷博物館へ。ここははじめて。飯田橋から歩いて10分以上かかる。「キンダーブックの80年」という表紙の変遷を扱った展覧会がお目当て。これは無料。戦前に生まれた児童向け雑誌がどのように変化を遂げてきたかがわかる。子どもの頃、見ていたことがあるかと思うが、記憶には残っていない。今見ると、昔の方がはるかに興味深く見えるが、子どもの姿が今よりも豊かに描かれている気がする。生活が、もっとわかりやすいものだったのかもしれない。逆に、今の表紙に描かれた子どもは貧相だ。そこに時代が映されているのだろうか。
あわせて、「百学連環」という百科事典と博物誌についての展示を見る。昔の細かな記録画を見ていると、写真の弊害ということを考えてしまう。あれだけ細かに物を描くということは、それだけ細かな観察をしているということだろう。それが写真に撮るということになると、細かなところに目がいかない。そうなると、物との距離が遠くなり、曖昧になる。果たしてそれでいいのか。少し考えてしまう。
バスで上野へ。芸大の美術館に行く。「岡倉天心展」。彼が芸大でどのような教育を行ったのかを中心とした展示だが、国宝の絵因果経をこの美術館が所蔵しているとは知らなかった。ほかにも、かなりいいものが所蔵されている。ここでも、明治なので、調査した美術品を写真にとるのではなく、随行した画家がスケッチするというやり方がとられている。他にも、天心は芸大の教授陣に模写を積極的にさせていたことがわかった。印刷美術館で確認したことと通じている。
なかでも一番優れていたのは、竹内久一の東大寺法華堂の伝月光菩薩立像の模造。相当にできがいい。塑像が木像で表現されているのもすごい。この竹内久一という人、これまで知らなかったが、相当の実力の持ち主だ。観音像もいいし、日蓮の像もいい。職人上がりで、特殊な領域に秀でた人間だったようなので、これまであまり注目していなかったのかもしれないが、宗教美術史という観点からすると重要だろう。
帰りに小田急デパートに寄るが、エレベーターのなかで、原一男さんの奥様に久しぶりに出会う。原さんは大阪芸大の先生になっていて、毎週大阪に通っているとのこと。奥様も同行しているらしい。
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