1月5日(土)井上ひさしの「ロマンス」を見る
最近、すっかり現代演劇を見なくなったけれど、WOWOWで井上ひさしの「ロマンス」という、アントン・チェーホフの生涯を題材にした芝居をやっていたので、それを見た。テレビ画面が大きく、ハイビジョンなので、臨場感をもって見られる。なかなかおもしろかった。昔の井上ひさしの作品とはかなり違う印象を受けた。昔はもっと喜劇をめざしていたのではないだろうか。役者では、やはり大竹しのぶがいい。松たか子は、歌舞伎役者が普通の演劇に出たり、テレビに出たときによく見られる大げさな印象が強い。力が入りすぎていて、彼女が演技をすると、そのすぐ後は、ほかの役者もつられて大げさになりがちだ。
音楽劇ということで、生のピアノの伴奏で歌が入るが、その意味があまりよくわからない。役者の歌というのは、歌手の歌とは違うし、音楽劇にする必然性がないように思えた。実際、後半になると歌があまり出てこない。
最後、チェーホフが、演出家のスタニスラフスキーに演出上の問題で厳しく批判するところは、作者の本心が出たようにも思えた。あるいはそこに、作者の老いのようなものが出ているのかもしれない。大江健三郎の小説が、激しい故郷批判に傾いていったのと似ている。これは、注意しないと誰もが陥る罠なのだろう。
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