11月15日(土)要するに日本とアメリカの戦争である
要するに戦争である。もちろん、日本とアメリカの戦争である。
話は、黒船来襲にさかのぼる。さかのぼるはずだが、それはあまりに遠い。
とりあえず、第2次世界大戦、太平洋戦争である。はじめて日本とアメリカは真っ向から対決した。これだけ全面的な、しかも長期にわたる戦争というものは、世界史上でも珍しいものではなかっただろうか。アメリカは、日本を徹底的に破壊した。その点は、絶対に落とせないポイントだ。日本の都市に壊滅的な打撃を加え、最後は原爆まで使った。これで、日本はもう立ち上がれないと、アメリカは考えたであろう。
しかも、戦後の占領期において、日本の社会構造にも根本的な打撃を与えた。天皇制は存続したように見えるが、皇室は財産を奪われ、貴族制度という基盤を失った。大土地所有が難しくなり、財閥が解体された。憲法まで、改正せざるを得なくなる。それによって、軍事力を奪われる。ここまで、徹底して制度が壊されることも珍しい。
にもかかわらず、というか、アメリカの思惑とは逆に、日本を徹底して破壊することが、日本に再生の力を与えた。軍事面に経費を支払わなければならないという重荷から解放された戦後の日本は、驚異的な経済発展をとげた。
高度経済成長は、日本を世界第二の経済大国に押し上げ、一億総中流という事態が生まれた。しかも、オイル・ショックが起こったにもかかわらず、すぐに日本経済は回復し、消費社会化からバブルへと突き進んでいく。日本は世界一と言われ、アメリカを買い占める勢いを示した。そのとき、日本は、アメリカとの戦争に勝ちそうになっていた。
しかし、その勢いがあまりに急だったために、バブルは崩壊した。オイル・ショックのときとは異なり、銀行が不良債権を抱えた結果、深刻な不況が訪れた。というか、訪れたということになっている。
たしかに、銀行のなかにはつぶれるところも出た。経済は低成長となり、地価も株価も低迷した。未曾有の就職難が訪れ、「失われた10年」といわれるようになる。
しかし、本当にそれは「失われた10年」だったのだろうか。バブルはたしかに行き過ぎだっただろうが、バブル崩壊後、日本の社会が本当に貧しくなったかと言えばそうではない。いつの間にか、東京には超高層ビルが林立し、バブルのときにも実現しなかったような超近代都市ができあがっている。消費が低迷するのも、ある意味、もう買うものがないからでもある。いったい、国民の多くを刺激するような新たな消費の対象などあるのだろうか。
日本は、まず安全である。凶悪犯罪が増えているかは疑問で、少なくとも金をめぐる犯罪は減った。裏社会も、力を失い、振り込め詐欺のような、庶民相手の犯罪に手を出さなければならないほど、おちぶれている。日本で買えないものはない。日本で見られない美術品などもない。いつか必ずまわってくる。食べられないものということになると、ほとんどない。日本ほど食べ物がおいしい社会はない。教育もいきわたり、当たり前だが、文字が読めない人など、ほとんど存在していない。直接的な戦争の危険性もない。北朝鮮だって、その軍事力は張りぼてのようなものかもしれない。
日本ほど豊かな社会はない。しかも、アメリカのように、借金をして消費をするというような、危険な方向にもむかっていない。格差は広がったといわれるが、世界的な規模で見れば、その差は小さい。そもそも、日本と他の国の格差が広がっているのだから、国内格差はあまりに小さい。
もう日本はこれ以上豊かになれない。しかも、人口は減少に向かいつつある。それは、経済発展が不可能になったこを意味する。もう発展しようがない。その結果、金利は低下した。金利の低下は、経済的なパフォーマンスが効率的だということを意味する。
それは、今から振り返ると、日本の陰謀でもあるように思えるが、世界は日本の低金利に群がり、低利の金を借りて、投資に使った。金利差ということだけで、投資した人間、機関、国家は儲かる。だが、そこには実体が伴っていなかったわけで、投資はひたすらバブルを生み出していくことになった。世界中がバブルへの道を歩み始める。その規模は、想像を超えたものになり、みな、バブルだとわかりつつ、そこから降りられなくなった。
アメリカでは、もっとも大きなバブルが膨らんだ。ヨーロッパも同じで、住宅と株価を中心に、あらゆるものが投資の対象となり、バブルの規模は未曾有のものとなった。それは、いつか崩壊する。誰もが崩壊を予知していたが、日本が低金利である限り、投資は続き、危機は先送りされた分、壊滅的なものになった。
世界的なバブルが崩壊し、世界の資産の半分が、あるいはもっと失われた。いわは、アメリカは、サラ金から金を借りながらマルチ商法に深入りしたようなものだから、どうしようもない。対策など存在するわけはなく、経済危機は深刻化していく。雪だるま式に危機はこれから深刻化していく。ヨーロッパも、経済統合が進んだ分、一蓮托生で、危機は深刻だ。
日本の場合、金融機関が不良債権を処理し、相当に長期にわたる好景気を実現できたのも、世界中がバブルになり、消費が拡大することで、日本の輸出が伸び、それが日本に金をもたらしたからだ。それも、日本の低金利のゆえともいえる。その点で、日本が仕組んだという陰謀論も可能かもしれない。
世界中でバブルが崩壊し、不況が深刻化すれば、日本のようにはいかない。日本だって、経済的な打撃は大きいが、サラ金から金を借りてのマルチ商法ではないだけに、生活を切り詰めれば、なんとかなるし、相対的に優位になった状況では、条件は他の国と比べられないほどいい。
リーマン・ブラザーズが倒産したとき、日本は、アメリカとの戦争に勝った。アメリカは、経済摩擦で日本の経済をコントロールしようとした時期もあったが、グローバル化のなかでは、もうそれは起こらない。
日本人は、将来が不安だ、不況だといいつつ、外資というハゲタカが去っていったことで、気分をよくしている。金融恐慌と言われつつ、日本人は暗くなっていない。むしろ、明るいようにも見える。それも、日本がアメリカとの戦争に勝ったからだろう。提灯行列はないが、実はこころのなかで行列をしているのかもしれない。
日本は恐ろしい国だと思う。一番の強みは、日本は日本になってから、ずっと日本だということにある。文化は連続し、それが日本人を支え、社会を支えている。その点だけでも、世界は日本に勝てない。文化的なものを求めて、世界を旅しようというとき、日本ほど興味を引く国はない。日本にいれば、世界を味わえる。世界を体験することができる。
今、ゆるキャラなるものが流行している。そんなキャラクターは、他の国には存在しないし、ありえない。日本自体がゆるキャラになっている。ゆるキャラがあなどれないのは、その背景に、日本の文化があるからだ。ひこニャンは、国宝の彦根城のキャラクターだし、せんとくんは1300年の都、奈良のシンボルだ。日本は、「ゆる国家」で、ぬえ的である。だが、今の状況で、世界は日本に注目せざるを得ない。
戦後は終わった。もう戦後を終わらせてもいい時期に来ている。
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Comments
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お世話になっております、kawasakiです。
読ませていただき思ったのですが、
世界中で金融危機の戦火が燃え上るなかで、
うまくすり抜ける日本の未来像が見えるような気がしました。
もしくは、ボディーブローを打ち合う我慢比べのなかで、
結局、最後まで立っているのは日本だという、未来像が見えるようにも思えます。
大変、興味深い視点だと思います。
Posted by: kawasaki | November 16, 2008 12:34 AM