4月30日(木)安丸良夫『出口なお』の解説を書いて「お筆先」のテキスト・クリティークの重要性を改めて感じる
洋泉社からMC新書というものが刊行されている。MCとは、モダン・クラシックの略で、現代における重要な著作物のなかで、品切れになっていたり、絶版になっていたりするものを、もう一度新書として蘇らせようという企画である。今回、安丸良夫氏の『出口なお』が、そのMC新書の一冊として刊行され、私が解説を書いている。
もちろん、安丸氏の『出口なお』はずいぶん前に目を通している。この本自体、1976年に刊行された後、87年には選書として再刊されている。その意味では、今回3度目の刊行ということになる。
昨年、大本を訪れたこともあり、その歴史や動向に関心を持っているが、解説を書くために改めて安丸氏の論考に目を通してみると、やはり一番気になるのは、「お筆先」の問題である。お筆先は、出口なおが自動書記の状態で記したものだが、一般に読まれているのは、出口王仁三郎が漢字に直し、内容もいじったものだ。その点では、オリジナルとは言えない。なおと王仁三郎では、思想が大きく異なり、そこには対立する部分も含まれている。
これは、武田崇元氏に電話して確かめたことだが、王仁三郎の側の見解では、お筆先のなかには、邪神がなおに降って書いたものもあるという。そうなると、いったい何を持って、正しいお筆先として良いのか。一般のテキスト・クリティークとは異なる問題が持ち上がってくる。それが、大本についての研究を難しくしている面は否定できないだろう。どこかで、本格的なお筆先についての検討が必要なことは言うまでもない。
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