6月23日(火)村上氏が1999年頃に私たちの研究会に参加してくれていたとしたら今回の新作はもっと別のものになっていたことだろう
村上春樹氏の『1Q84』が依然として売れ続けている。新聞では、この本をどう読むか、特集が組まれたりしている。全体的に高い評価が与えられている気配だが、果たしてそう評価していいものだろうか。この作品、相当に問題を抱えていることも事実だ。
あれは、1999年頃のことではないかと記憶している。ちょうど私は、すべてをなげうって、『オウム』の本を執筆していた頃のことになる。本の初稿を書き上げるのに、まるまる一年を費やしたが、それと平行してオウムの問題について、研究会をはじめていた。
研究会をはじめるにあたって、私は、村上氏にも参加を打診するメールを送ってみた。ちょうど、読者との対話をするためのサイトが開設されていて、それを通して、メールと送ったのだ。どういう反応があるか、まったく予想できなかったが、村上氏からはFAXが届いた。
そのFAXは、今でも我が家のどこかにあると思うが、研究会に対して興味があるが、自分は小説家として、この問題については一人で考えてみたいと記されていた。からだの調子がよくないとも書かれていたが、それはあくまでエクスキューズのためのレトリックのように感じられた。
その研究会には、当時、オウムの問題を考える上で、最良のメンバーが集まっていたように思う。その研究会にもし村上氏が参加してくれていたとしたら、彼の認識もずいぶんと違うものになっていたのではないだろうか。逆に言えば、彼が研究会に参加しなかったことは、判断として誤りだったのではないかと思う。オウムの問題は、会った一人で考えていると、必ず袋小路に陥る。それを避けるためには、対話を続けるしかない。対話を続けないと、ある意味、オウムの信者たちが陥っていったのと同じ罠にはまりこんでしまう。今回の小説は、村上氏がその罠にすっぽりとはまりこんでしまったことを証明しているのではないだろうか。
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島田先生こんにちは。オウムの話題からそれたコメントで恐縮ですが、同じく現代人や現代社会を考える上で興味深い宗教の動向に関するコメントということでご容赦ください。6月7日の佐々井秀嶺さんの護国寺講演には行かれなかったようですね。当日は600名前後の聴衆が集まり、大賑わいでした。翌日から、ブログ上に感想を述べたものが多数ネット上に現れたことも反響の大きさを物語っているようです。一方で、島田先生はじめ、大学等の宗教学やインド関連の研究者、仏教の教学の専門家の反応は、不思議なことに、ネット上を見る限りはさっぱりですね。研究という立場から見ても、日印関係や、宗教のあり方を考えたりする上で、佐々井師の活動は興味深い事例だと思いましたが・・・。市井の人たちとアカデミズムの間には乖離があるということでしょうか。どう思われますか。
(参考までに、佐々井師の動向を追ったサイトを紹介)
山本宗補の雑記帳
http://homepage2.nifty.com/munesuke/zakkicho-monthly.html
てやんDay(佐々井師のお弟子さんによるブログ)
http://cybertempledennoji.cocolog-nifty.com/teyanday/
佐々井秀嶺師、護国寺講演まとめ(ひじる日々 東京寺男日記)
http://d.hatena.ne.jp/ajita/20090608/p1
Posted by: 米太郎 | June 23, 2009 10:09 PM