4月30日(金)歌舞伎座閉場に思う
歌舞伎座が閉場式を迎えた。建て替えということで、新しい劇場ができるのは3年後のことらしい。建て替えの計画が発表されてから、実際に閉場するまで、予想されたより多くの時間がかかった。最初に出た案に異論が噴出したせいだろうが、歌舞伎を支えてきた建物だけにいろいろと難しいことがあるのだろう。閉場にむけて、公演はかなり盛況だったらしい。
新しい歌舞伎座ができるまで、歌舞伎の公演は新橋演舞場を中心に分散するようだが、それを受け入れる各劇場としてはありがたいことかもしれない。安定した集客を見込めるということでは、歌舞伎ほど優れたコンテンツはない。近代に入って、歌舞伎は古い演劇として批判を浴び、それを刷新する試みも行われたが、結局、歌舞伎はそれを生き抜いたと言える。それに比べると、新劇以来の演劇は形式をうまく作り上げられなかった分、物足りない。
その事態は、新しい歌舞伎座ができ、ほかの劇場で歌舞伎が上演される機会がまた減ると、より如実にあらわれるかもしれない。あるいは、歌舞伎公演の継続を劇場が望み、いよいよ歌舞伎が演劇界を席巻することになるのかもしれない。歌舞伎恐るべしということになりそうだ。
ただ、歌舞伎自体は公演としては盛況で、一方で今活躍している劇作家に書かせるなど、新しい試みも行われているが、観客ということを考えると、かなり固定化されているし、何より、男性がほとんど見なくなっていることは問題だろう。それに、歌舞伎見物にかける意気込みというものが観客の側に薄れている。それも時代の変化が生んだことで、いたしかたないことかもしれないが、演劇が上品な観劇の対象にだけなっている現状は、少しさびしい。そこに歌舞伎のこれからの難しさがあるように思う。
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