8月15日(水)終戦記念日に新橋演舞場で海老蔵を堪能する
午前中から午後にかけては、『エコノミスト』から頼まれている原稿を書く。欧州の経済危機とキリスト教信仰との関係について。少し新しい視点も入れて書いてみる。
午後は、新橋演舞場へ。8月花形歌舞伎夜の部を見るため。やはり海老蔵人気で、ほとんど席がとれなかった。2会の2列目で見る。場内は当然満員。
「伊達の十役」は、猿翁でも見ていないし、昨年1月の海老蔵も見ていないので初めて。あるいはテレビで見たことはあるかもしれない。海老蔵の口上からはじまる。
最初の方は、とにかく早変わりがめまぐるしく、海老蔵の声の出し方も、役によって変えているのがかえって不自然に感じられるが、観客はけっこう早変わりの趣向に喜んでいる。海老蔵としては、土手の道哲が一番はまっていて、生き生きとしている。道哲になると、こちらもわくわくしてくる。
女形も、海老蔵は顔がきれないので、見た目は悪くない。一番心配だったのは政岡だが、案外それが悪くない。最後の方の愁嘆場は、単調になってくどくも感じられたが、子供に対する情愛を表現することについては、「実盛物語」もそうだが、海老蔵は案外うまい。おそらく玉三郎の政岡が念頭にあるのだろうが、玉三郎よりも情感があったりもする。
俄然面白くなってくるのは、仁木弾正の宙乗りのあたりから。とくに最後の4幕目は圧巻。早変わりの意味がはっきりとしてきて、物語がしだいに盛り上がっていく。なんといっても弾正の狂気の場面、これは前にも「先代萩」だったか、海老蔵の凄みが出て、見ているだけで怖くなったところだが、ちょっとほかの役者にはできないところだろう。この最後があるだけで、全体がしまってきた。やはり海老蔵。猿翁が、「伊達の十役」は君と、海老蔵を指名した気持ちがよくわかる。なんといってもひとりで演舞場を満員にして、観客を満足させるのだから。
一時の海老蔵は、本人も「ほうおう」で語っているように、何をやっていいかわからなかったようだが、今はふっきれている。いろいろ問題はあるが、この時代をぜひ突っ走って欲しい
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