9月2日(日)秀山祭復活の福助
秀山祭初日である。少し雨模様。昼の部を見た。やはり初日にこれは見なければならないと思った。福助5年ぶりの舞台だからである。
去年の7月の歌舞伎座も、一種異様な雰囲気に包まれていた。海老蔵が妻を失いつつ、息子と舞台に立ったからである。今回は、性格は違うが、期待と不安に包まれているというところでは明らかに似ていた。観客のお目当てがそこにあるのは間違いなく、場内は満員だった。
初日ということもあり、幕開けから、「成駒屋」の大向うの声が響く。演目は「金閣寺」。雪姫を演じるのは、福助の息子、児太郎である。大膳は、松緑。いつになく声が通る。極悪人にはまだまだ遠いものの、悪としての存在感は十分に示している。児太郎も、精いっぱいの演技でそれに答える。愛くるしく、可憐だ。
後半になると、その児太郎の演技がかわる。まるで福助の魂が乗り移ったように、親なのか子なのかが分からなくなっていく。そして、福助の登場。いったいどのような状態なのか。金閣寺2階に現れると、観客の拍手は鳴りやまない。それが終わってから、おもむろに台詞をしゃべる。台詞はしっかりしているが、右手が不自由なのが分かる。座ったまま、短い間だが、何か神々しい、聖なるものを感じさせた。演技が終わっても、ふたたび鳴りやまない拍手。
終わっても、安堵と不安の入り混じった気持ちが観客を支配する。これからどうなるのか。5年というブランクは長くもあり、短くもある。人が復活するということは、外側から見ていてはわからない部分があまりに大きい。筋書の写真は、かつてのまま。これが現在の写真に変わったとき。本当の復活になるのかもしれない。
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